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今まで「普通って何だろう」という問いかけに何度か接することがあった。
辞書で調べると、一般的なこと、他と変わらないこと、めずらしくないこと、などと書いてある。
自分では、「普通イコール平均的ということかな」と答えることが多い。
先日、F-shinさんのブログでこんなエントリーがあった。
システム仕様の話でなく、施策レベルでの仕様を検討するときに「普通はこうなってるからこうした方が良い」と言われるのは勘弁して欲しい。
あるある、とうなずける話である。
人からそんな言葉を聞くこともあれば、実はわたしも、「普通はこうなんですよ」と押し切ってしまうこともある。デザインの話をしていても、戦略の話をしていても。
ただ、それはたいてい説明を省略しているときだ。付き合いが長く、リテラシーが高いクライアントの場合は、「普通」を読み取って変換してくれるので、単純にそう言って話を進めてしまったりするのだ。
その場合の「普通」とは、前例があること、平均的であることであり、つまり「ユーザが慣れている」ということだ。
だから、それを踏襲することが、今現在の使いやすさを追求する一番早い方法である場合がある。
新しい動線、新しい使い勝手、新しい何かを求めて、考えて、それを実現したり普及させていくのは大切。だが、今まで慣れた方法をやめて、それを一度にやるのはリスクが大きすぎるのである。
人が新しいことに慣れるには、ストレスがかかる。新しい職場、新しい環境、新しい人間関係、新しいパソコン、新しいソフトウェア、新しい手順、新しい……。
たとえば、先日わたしは、マシンをmacに変え、使うアプリケーションを変え、キーボードを日本語キーボードから英語キーボードに変えた。それによる、ものすごいストレスと、生産性のものすごい低下は、覚悟していた自分でも驚くほどであった。
「新しいもの」で成功した例として今よくあげられているのは、iPhoneだろう。
今までの携帯電話とはあまりに違うインターフェイスだ。
だけど、たとえば写真を見るとき「普通はこうする」だろう動作を、指で行えばページがめくれるし、拡大もできる。
これはちょっと余談なんだけど、思うのは、まったく新しいインターフェイスだからこそ、アナログ的な指でめくるという動作に慣れるのも早いのだろうということ。脳にもカラダにも心にも何らかスイッチが存在すると思うので(たとえば、わたしは黒いキーボードだとwindows的ショートカットを、白いキーボードだとmac的ショートカットを無意識に使ってしまう。色がスイッチになっている)。
さて、iPhone、Appleではないところが出したら、どうなってただろうか。
Appleが今まで作ってきたブランドやファンがなかったら、成功の可能性はぐっと減っただろうと思いませんか。
普通でないことをするには、それなりの覚悟とか相応の準備が必要なのだ。
単に普通を嫌って新しいものを求め、失敗したことは何度もある。
新しい造語を使ってみただけで、ユーザに全然理解されなくなっちゃったWebサービスに関わったこともある。
特に小規模案件では新しいものを取り入れすぎると、初速が出なくて失敗するケースが多いという印象がある。
普通って思ったより大切ってことだ。
とは言え「どうして普通が良いのか」を説明しなければ、単なる手抜きや妥協案だと思われるので、言葉には気をつけたほうが良い。
新しいものを取り入れるときは、ひとつずつ。多くてもふたつ。
ユーザに「新しいものを理解する」というストレスを与えるのならば、必ずそれ以上の何か(楽しさや気持ち良さや……)を提供することを忘れてはならないと思う。
と、書いてみましたが、やっぱりわたしは技術者でも芸術家でも発明家でもなくて、商人とかそっちのあたりですね。
普通を嫌ってメチャクチャやってくれる会社も見てる分には好きだ。
ギャンブラーというかチャレンジャーというか。
イノベーターってそういう人たちなのか知らないけど、憧れる。
余談:
「普通」と「普通でないこと」のバランスが大切だねって話になっているような気もするけど、「バランス」という言葉もサラリと使うとただの便利な言葉になってしまうので注意したい。
「大事なのは結局コンテンツだよね」というのと同じで、そこで話題が止まってしまう危険がある。